にいがたショートストーリープロジェクト2026

にいがたショートストーリープロジェクトに投稿された作品を掲載しています

「新潟在住の売れてない作家の日常」~ショートコント風?~ 利根川尊徳 著

 タイトル 「たまご要員?」

「あなた、宜しく、」と家内が私に声を掛けた。

「ああ、そうか今日は木曜か・・・」そう言って普段車内で家内が戻るのを待つ私は、家内と連れ立ってとあるスーパーの中へ入って行った。店内は木曜日とあって、連れ立った買い物客でごった返していた。憮然とした表情で奥さんの後に続く私の様な前期高齢者、中学生と思しき体操着姿の少年、お母さんに手を引かれた小学校低学年の生徒、母親と楽しそうに会話しながら歩く女子中学生、母親に代わって幼子の手を引く女子高生等木曜日は老若男女が入り乱れているのだ。

 この木曜の「たまごの日」は、週の中で土日の「朝市」に次いで活気のある一日だ、私は家内の後を追って店の中を歩いて回った。家内は幾つかのスーパーの中でこの店が一番安く売っている物を選りすぐって籠に入れていた。

 日本のほとんどの主婦は、チラシと睨めっこして、同じ商品なら1円でも安く買うのが日本の主婦道なのである。例え今いるお店からの移動にガソリン代11円掛かろうともなのである。店内を歩き回っていた私の目に掘り出し市というワゴンが目に止まった。私は吸い寄せられるようにそのワゴンの中を、我を忘れて覗き込んでいると、

「あなた!」と大声で私を呼ぶ家内の声が聞こえ振りむくと、

「お一人様1個限りなんだから傍(そば)に居てくれないと・・・」と言ったところで私が家内の方へ駆け寄ろうとすると、

「あれが、主人です!」と家内の声がし、続いてレジ打ちの店員さんが、

「畏ま(かしこ)りました、」と言って家内に一礼する姿が目に入った。無事にレジを通った家内が私に向かって、

「ダメじゃない、今日は「たまご要員」なんだから傍に居てくれなくちゃー」とお説教するように言ってきた。

その時、私の目の前を、赤ちゃんを負ぶった若いお母さんが、レジ袋の中に2ケースのたまごを詰めていたのを見咎めた私は家内に、

「たまご要員の年齢資格って、どうなっているの?」と質問すると、

「そんなの私が分かる訳ないじゃない!」とつれなく言われ、私は老若男女問わないたまご要員の年齢資格が気になった。かくして、木曜日私は、たまご要員に変身しながらしがない売れていない作家稼業を送っているのである。(たまご要員の巻)

 

タイトル 「ティッシュの日?」

 出掛けに家内が私に向かって、

「あなた、今日はティッシュの日だから宜しく、」と声を掛けてきた、知らない人が聞いたなら夫婦の夜のサインと間違えそうな「ティッシュの日」は、毎週金曜日にやって来る行きつけのガソリンスタンドでガソリンを10リッター以上給油するとティッシュボックスが1箱貰えるというサービスデーなのである。

 その為、我が家ではこの日を「ティッシュの日」と命名しているのだ。そして更に15リッター以上給油するとサービスカードにスタンプを押してくれ、押されたスタンプが40個になると500円の日本全国どこでも使える商品券が発行される事になっていた。

 私は決まって15リッター以上を給油し、ティッシュボックス1箱とスタンプを押して貰うことにしていた。車を2台所有していると1週間に1回どちらかの車に給油する事になる為、ここ数年我が家ではボックスティッシュを買ったことがない。

 年金暮らしとはそんな創意工夫が必要な生活なのだ。それにしても私が驚くのは、このティッシュの日にガソリンスタンドに行くと何時もの3倍の人員を割いて、進入経路を一方通行にして交通整理が必要となるほどの車が殺到するのだ。

 そんな中で「何時かは〇〇〇〇」と車をステータスシンボルとして讃えていた車や高級外車といわれるBMWやベンツ・アウディなどを目にすると「ティッシュの日」の凄さを痛感した。というか内心、(ステータスシンボルに乗りながらもティッシュボックスひと箱が欲しいのか?)と思っていたら後に、そのなぞは呆気なく解けた。それは、スタンドの従業員が何気なく呟いた一言なのだが、

「車はリースで会社の経費で落とし、ガソリン代も会社経費のくせにティッシュボックスは私物化するって、最近の経営者達は、・・・」と呟いていたのだ。それを聞いて私は、(何だ!アウディもBMもベンツもリース車か、ステータスシンボルとして購入された物じゃなかったって事か?)と合点がいった。そんな話を小耳に挟みながら給油メーターが15リッターを超えたところで私は給油を停止させ、店内で清算を済ませるのであった。

 給油を終えた私は、家内を伴って、ネットで見つけたあの「考える人」で有名なロダン作の彫刻が長岡市の「和島道の駅」と「良寛記念館」の一画にある「菊盛美術館」で見られる事を知った、そこへと向かった。

その美術館では他に高村光太郎の「乙女の像」十和田湖の湖畔に佇むあの像の基になった彫刻像を見る事ができた。長岡で美術の教科書で知った代表作「考える人」で世界的に有名なロダンの像が見られることにちょっと感動した。(菊盛さんに感謝)

 

タイトル「火曜市」

 毎週火曜日、私は家内と連れ立って夕方あるショッピングモールへと出かけるのが日課となっている。我々のお目当ては、このショッピングモールの2階通路で行われる半額市なのである。

 この半額市は、季節外れとなってしまった衣料品が売値の半額で購入できるという非常にお買い得なのである。ここ最近私の着ている外出着はこの火曜市の半額セールで購入した物と言っても過言ではない。正に私の様な年金生活者の心強い味方なのである。

 今私の衣類は、この火曜市の半額セールとユ〇クロの特売品で賄っている。そして足の短い私にとってはユ〇クロのアンクルパンツは裾の処理がいらない優れもので、しかも伸び縮みしてくれるストレッチが利いているので出っ張ったお腹周りに優しくて快適なのだ。

 現職を退いてからスーツとネクタイから解放された私は、火曜市、ユ〇クロのバーゲンのお陰でカジュアルなファッションを満喫している。そして、毎週木曜日の全品5%オフで買い物ができるシルバーズデーも外さずお世話になっている。

 この他に私には、「燃えないゴミの日」「生ごみの日」「ビン・缶・ペットボトルの日」「資源ごみの日」があり、それぞれに対応しながらそれなりにちょっぴり忙しい毎日を送っている。定年退職し、年金生活になると毎日が日曜日と言われたが私は、「ティッシュの日」「たまごの日」「火曜市の日」「燃えないゴミの日」「生ごみの日」「ビン・缶・ペットボトルの日」「資源ごみの日」とそれなりに毎日ちょっぴり使命感を抱いて生きている。生きるという実感を噛みしめながらそれとなく充実した日々を送っている。

 そして何より、幸い家内とは冗談を言い合える関係を維持できているので、夫婦漫才のような会話をする事で互いにストレスを発散しながら前期高齢者生活をエンジョイしている。

 更に節約生活と言えば高速道路の利用も早朝3時に起床して、4時までに高速道路のインターに入り、出る時は深夜12時を回ってから出る事で、普通車で長岡の自宅から家内の実家近くの東関道・大栄インターまで割引なしで走ると9,860円の所をNワンという軽自動車で、早朝3時起床で4時前に長岡インターを入り、大栄インターへ行くと4,860円と軽自動車割引と早朝の3割引を使う事で半額まで節約できる。年金生活者は節約上手なのである。