
《 あなたの綴る短編小説、掌編小説を広く募集します 》
条件は一つ。作品に“新潟のエッセンス”を加えること。
舞台が新潟。新潟出身の主人公。新潟の名物や名産を盛り込むなど、
ちょっとでいいので“新潟のエッセンス”を入れてください。
素敵な作品は書籍化し、朗読イベントや読み聞かせを行い、
多くの方々の目に、耳に届けていきます。

条件は一つ。作品に“新潟のエッセンス”を加えること。
舞台が新潟。新潟出身の主人公。新潟の名物や名産を盛り込むなど、
ちょっとでいいので“新潟のエッセンス”を入れてください。
素敵な作品は書籍化し、朗読イベントや読み聞かせを行い、
多くの方々の目に、耳に届けていきます。
「あのさぁ、俺。好きな人出来た」
放課後の帰り道、一緒に帰っていた幼なじみの、橘 奏多が唐突にそう言った。
一方、まだ状況が飲み込めない私…神崎 優は呆然としていた。
「……は?え、あんたに?す、好きな人が出来ただぁ?」
「うん」
「え、相手は?」
奏多は、うーん、と、少し長い黒髪を指で弄りながら考える。
「1組の佐藤さん」
1組の佐藤さん、佐藤さんはとても可愛らしく、礼儀正しい女性だ。男女関わらずモテている。
「なんか思った通りって感じ。でも、佐藤さんが好きな人なんて沢山いるから、ライバル多くない?」
「でも、告白するくらいは良いでしょ」
「でも、佐藤さんは………」
続きを言いかけた途端、空から鳥のフンが降ってきた。鳥のフンは見事私の頭に落ちてきた。
「う、うわぁぁぁぁぁ!!!」
今までに出した事ない大声で叫ぶ。
奏多はあまりのうるささで、耳を塞いでいる。
「と、と、鳥のフンがっ!頭にっ」
鳥のフンは、生暖かかった。
それがもっと気持ち悪い。
「ねぇ…ねぇ!」
「な、何?!」
「さっき何か言いかけてたじゃん。佐藤さんがナンタラカンタラ…」
そんな事はどうでもいい!と言いたかったが、早く頭を洗いたい、という気持ちが勝ってしまい、奏多を置いて、家に帰った。
初めて高田の雁木を見た日、私は健太と手をつないでいた。
「なんか、屋根がガタガタやな」
「家が違うからな」
「でも、ずっとつながってるやん」
「雪が降っても歩けるようになってるんだよ」
高田の雁木は、雪の日にも歩ける屋根付きの通路だ。家ごとに高さも柱も違うのに、隣へ隣へと続いている。面白い。でも正直、それどころではなかった。
交際半年。初めて健太の実家に行く日だった。朝から服を三回着替え、新品のショートブーツを選んだ。雪国なのに。わかっていたけど、初対面から長靴の女だと思われたくなかった。
雁木に入る手前で足を滑らせ、健太の腕にしがみついた。
「だから言っただろ」
「言うの遅いわ」
「昨日から言ってたけど」
それはそうだった。健太は笑って、私の手を握り直した。
家に着くと、お母さんは私の足元を見た。
「理沙ちゃん、そんな靴じゃ滑るよ」
第一印象、失敗。お母さんは奥から黒い長靴を出してきた。
「私の予備。冬に来るときはこれ履きなさい。ここに置いとくから」
可愛くない。まったく可愛くない。でも履くと驚くほど歩きやすかった。また来てもいいんだ。私は下を向いて笑った。
「いやあ、新潟ってラーメンの種類が多いんですね」
男は、カウンターの隣に座る老人に話しかけた。
「東京からドライブで来たんですけど、今日は燕三条系を食べようと思って」
「ほう。ラーメン目当てかい」
「ええ。せっかく来たんですから、地元の人しか知らないような美味しいものを食べたいんです」
「それなら、まず食べてみなさい。話はそれからだ」
運ばれてきた丼を見て、男は目を丸くした。
「なんですか、これは。表面が脂で覆われていますよ」
「燕三条系だね」
「こんなに背脂を入れて、健康に問題はないんですか?」
「健康の心配をしながら食べるのかい?」
「いや、それは……」
「なら、心配する前に麺が伸びるよ」
男は箸を取った。
「……うまい!」
「だろう?」
「濃厚な醤油の味に、背脂の甘み。太い麺がスープに負けていない。これは単なる食事ではありません。相反する要素が調和した、ひとつの哲学です!」
鳥居をくぐって境内に入ったところで、左右にニ頭の狛犬が見えてきた。
両方とも何かでぐるぐる巻きになっていたので、私は少し不気味に感じた。
修復中なのかとも思ったけれど、近くに寄って案内板を読んで納得した。
この狛犬は『足止め狛犬』で、禁酒、禁煙、夜遊びなど止めたい、止めさせたいことを麻ひもで縛って祈願すると叶えてくれるらしい。商売繁盛、縁結び、試験合格にもご利益があるようだ。
私はふと、たくさんの参拝者たちの願いごとでがんじがらになっているのを気の毒に思いながらも、いい機会なので自分も何かお願いをしてみようかと思いたった。
けれど、止めたいことは山ほどあるはずなのに、まったく何も浮かんでこない。
「うーん、うーん、うーん」
境内には誰もいなかったので盛大に唸っていたら、
「そうだ、夜の間食」
一瞬のうちにようやく肝心な事を思い出せたので、私はとても晴れやかな気持ちになった。
私はいつもとは違う一人旅にしたいと思い、初めて着物レンタルをしてみることにした。
帯や帯締め、カラフルな草履や髪飾りなど組み合わせが自由で、大正ロマンのアンティークな着物も豊富にある。
私の気持ちはすっかり舞い上がり、歩幅を狭くして内股で歩かなければならないので、明日はきっと筋肉痛になっているだろう。
さて、散策を満喫中、思いのほか急なドッペリ坂で、前方には着物姿で楽しそうに歩くカップルがいた。
彼女の手を優しくひいている彼氏の後姿を見ているうち、
「私も誰かにお姫様扱いされたい」
と羨ましくなった。
私はこれまで恋愛から縁遠い人生を送ってきた。
好意を持っても振り向いてもらえなかったり、好意を持ってくれても受け入れられなかったり。
なかなか交際までに発展しなかったので虚しさを感じたこともあったけれど、いつかまたこの地に訪れて、次はパートナーに着物を選んでもらおうと淡い夢を持った。