にいがたショートストーリープロジェクト2025

にいがたショートストーリープロジェクトに投稿された作品を掲載しています

2024-01-01から1年間の記事一覧

温もり 大谷みなと 著

二十一時を過ぎると、人通りが極端に少なくなる。越後湯沢駅西口、駅前広場にある足湯。今日も私たちは、二人でここへやって来た。ここの足湯は直線状ではなく、凸凹と入り組んだ形状をしているため、一般的な足湯よりも近い距離で、向かい合って座ることが…

月下氷人絵図 漣霧 著

1 「親と月夜は、いつもよい」 母が口癖のように言っていた。 手取り十万円足らずで、床ずれができ、認知症みたいになった母の面倒を見ていくのは、どうにも自分の手に負えそうになかった。 月の明るい夜だった。 母を背負ってみると、背中のあたりに不思議…

そんな小さなエピソード 圭琴子 著

夏休みは博史(ひろふみ)と旅行に行くのが定番になっていた。 東京に行ったこともある。海外に行ったこともある。 でも付き合って八年も経つと、だんだんと行き先に迷うようになっていた。コロナ禍が終わらないこともあって、東京と海外は真っ先に候補から…

新潟県糸魚川翡翠と山梨県の隠し金山 キャップ 著

国上寺は、新潟県燕市にある真言宗豊山派の寺院である。 709年(和銅2年)、泰澄によって開山された。弥彦神社から神託があり、泰澄が創建したものという。泰澄は修験道の僧侶であり、修験道の寺院であったが、その後、法相宗、天台宗、真言宗醍醐派へと変わ…

悪魔とすし 大野美波 著

オレはモブ。本当のなまえはナンバーA503。悪魔である。人間の世界では出世コースにのれなかった労働者を『まどぎわ』というらしいが、それを言うならオレはまどぎわ悪魔だ。他に優秀な悪魔はごまんといる。今日も仕事は夜からにして、昼は遊びほうけよ…

雪舞う卒業式 芦沢シン 著

「なあ柊斗(しゅうと)、新潟では卒業式の日に雪が降りやすいって言われてるらしいぜ」「うん」「それって、新潟から離れたくない卒業生が冬に戻れと空に祈ってるからなんだって」「うん…ん?まさか!」 まさかそんな。僕は耳を疑う。小学生の噂じゃあるまい…

木漏れ陽に揺れる宿 ベッカム隊長 著

去年のGW、久々に北国街道の歩き旅に出かけ、関山神社に到着した。 境内の正殿の階段に腰掛け、汗を拭ってぼんやりしていると不意に、40年ほど前のことが甦ってきた。 大学の先輩から、「妙高山に登るルートにゴンドラリフトが設置されたから、夏にちょ…

朱鷺の舞 芦沢シン 著

ひらっ、ひらっ。 白い羽根を、きらびやかに羽ばたかせている。 あれは……朱鷺? まさか、ね。頼人(らいと)はかぶりを振る。しかし、目の前に広がる神秘的な光景は変わらない。 新潟県新潟市にある、万代シテイバスセンター。周辺に商業施設が立ち並ぶ中にあ…

馬上のひと 圭琴子 著

未明。急に美空(みく)が、火がついたように泣き出した。夜泣きなんかしたことがない子なのに、なんでこんなときに限って。 夫とは授かり婚でつわりが酷かったから、未空が一歳になってようやく訪れた夫の実家での出来事だった。 経験値はゼロに近いから、…

地獄改装中 高木淳 著

久々に新潟に帰って来たが、私のいない間に何か街に変わったことはないかと散策してみた。最近は新潟駅や古町付近に新しいビルが建っていることも少なくない。目新しいビルを見つけては、こんなもの有ったかと記憶をたどり、いやなかった。そう断定してまた…

高架下のシンボル 芦沢シン 著

「椿生(つばき)、お疲れ様!今日だけど、残業で今仕事が終わったから、これから向かうね。集合場所はいつも通り高架下の歩道でいい?」「うん。僕もこれから向かうからちょうどいい。今日も楽しみだな!」 会社を出る前に、友里(ゆり)とLINEを交わす。 月1回…

異動願い 楽市びゅう 著

「おたちゃん、そろそろ起きたら」 和貴の声に目を覚ますと、起き抜けの嗅覚に隣の部屋から漂う味噌汁の匂いを感じた。 枕元のスマートフォンに目をやる。土曜日の昼前。「おはよう」「お早くないよ。今晩には向こうに着いておきたいんでしょ」「うん。まあ…

おたちゃん 楽市びゅう 著

「おたちゃん、そろそろ起きんかね」 和貴の声に目を覚ますと、起き抜けの嗅覚に隣の部屋から漂う味噌汁の匂いを感じた。 枕元のスマートフォンに目をやる。土曜日の昼前。「おはよう」「お早くないよ。今晩には向こうに着いときたいんでしょ」「うん。まあ…

にいがたショートストーリープロジェクト2025

《 あなたの綴る短編小説、掌編小説を広く募集します 》 条件は一つ。作品に“新潟のエッセンス”を加えること。舞台が新潟。新潟出身の主人公。新潟の名物や名産を盛り込むなど、ちょっとでいいので“新潟のエッセンス”を入れてください。 素敵な作品は書籍化…