にいがたショートストーリープロジェクト2025

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君のこと 久保田毒虫 著

 最近の世の中、何かがおかしい。暗い話題ばかりだ。
 SNSを見ても、大抵誰かの悪口か揚げ足取り。嫌でも性悪説を信じてしまう。
 おまけに仕事も恋愛もうまくいかないときている。特に君のこと……。
 皆疲弊している。僕も疲弊している。
 疲れると、僕は気分転換によく星空を見に行く。僕が住む新潟を囲む星空は、世界で一番だと思う。
 仕事が終わり、明日は休み。僕は車で村上市にある天文台へと向かった。
 天文台の中にある、口径三十五センチメートルの望遠鏡を覗いて、星空を見上げる。お星様が沢山輝いている。
 その時、一際大きな彗星さんが望遠鏡を通り抜けようとした。僕は思わず声をかけた。
「ねえ。大きな彗星さん。なんだか人生うまくいかないんだ。僕はどうしたらいいと思う?」
「君は私に手が届くと思うかい?」
「そんなの高いし速いし無理だよ」
「そう。誰しもできることとできないことがあるんだよ。世の中全てが揃うことはないんだ。手に入らないものばかり数えてないかい?」
 僕は君を諦めるべきだろうか。